顎変形症の治療はいつ始めるべき?年齢制限はある? 専門医が年齢別にわかりやすく解説
「顎変形症と診断されたけれど、治療はいつ始めるのがいいのだろう?」
患者さんからよくいただく質問の一つです。
「まだ高校生だから早いのでは?」
「社会人になってからでも間に合う?」
「40代だけれど、今から治療できるの?」
年齢によって悩みはさまざまですが、結論からお伝えすると、顎変形症の治療には「○歳まで」という年齢制限はありません。
一方で、年齢によって治療の目的や考え方が少しずつ変わることも事実です。
今回は、成長期・成人・40代以降、それぞれの時期における顎変形症治療の考え方について、専門医の立場から分かりやすくお話しします。
顎変形症の治療は「早ければ早いほど良い」わけではありません
病気によっては、できるだけ早く治療を始めた方がよいものがあります。
しかし、顎変形症は少し考え方が異なります。
顎変形症は、顎の骨の成長と深く関係する病気です。そのため、特に顎矯正手術を予定する場合には、顎の成長がある程度落ち着いてから治療を行うことが一般的です。
もちろん、成長期の間は何もしなくてよいという意味ではありません。
この時期に大切なのは、
- 将来的に手術が必要になる可能性があるのか
- いつ頃から矯正治療を始めるのがよいのか
- 手術を行うとすれば、どのタイミングが適切なのか
を早い段階から把握しておくことです。
成長期(10代)の治療
10代は、顎がまだ成長している時期です。
この時期に最も大切なのは、現在の顎の状態を正確に診断し、成長によってどのように変化する可能性があるのかを予測することです。
患者さんやご家族から、
「手術は何歳になったら受けられますか?」
という質問をよくいただきます。
一つの目安になるのが身長の伸びです。
身長の成長と顎の成長は概ね同じ時期に落ち着くため、10代後半になり、身長の伸びがほぼ止まっていれば、顎の成長もほぼ終了していることが多く、顎変形症の治療を本格的に開始できる時期と考えられます。
実際には、高校3年生から大学進学・就職前後に治療を開始される患者さんも多くいらっしゃいます。
ただし、顎の成長には個人差があります。
そのため、年齢や身長だけで判断するのではなく、セファログラム(頭部X線規格写真)や咬み合わせの変化、これまでの成長経過などを総合的に評価し、成長が終了していることを確認したうえで治療計画を立てます。
また、受け口(下顎前突)の場合には、成長とともに下顎がさらに前方へ発育することがあります。一方で、上顎の発育不足が原因となっている場合もあります。
だからこそ、「まだ手術をしない時期」であっても、専門医による診察を受けることには大きな意味があります。
成人(20〜30代)は最も治療を受ける方が多い年代です
顎の成長が終了する20代前後は、顎変形症治療に最も適した時期といえます。
実際に、当院でも20〜30代の患者さんが最も多く来院されます。
この年代では、
- 咬み合わせを改善したい
- 顔の左右差が気になる
- 横顔や口元が気になる
- 食べにくさを改善したい
など、さまざまな理由で相談に来られます。
仕事や学校の都合から治療時期を悩まれる方も少なくありませんが、顎変形症は計画的に治療を進められる病気です。
矯正歯科医と口腔外科医が連携しながら、進学・就職・結婚などのライフイベントに合わせて治療計画を立てることも可能です。
40代以降でも治療はできます
「もう40代だから遅いですよね。」
このようなご相談も珍しくありません。
結論から言えば、年齢だけを理由に治療ができないことはありません。
実際に40代、50代で顎矯正手術を受けられる患者さんもいらっしゃいます。
ただし、この年代では若い頃とは少し違った視点も必要になります。
例えば、
- 歯周病の有無
- むし歯の状態
- 歯を失っていないか
- 顎関節の状態
- 全身疾患の有無
などを総合的に評価して治療計画を立てます。
若い頃より検査項目は増えますが、安全に治療を受けていただくためにはとても大切なことです。
「もっと早く相談しておけばよかった」と話される方もいます
診療をしていると、
「学生の頃から気になっていた。」
「もっと早く相談すればよかった。」
という声を耳にすることがあります。
もちろん、40代になってから治療を受けても遅すぎることはありません。
しかし、長年咬み合わせに負担がかかっていると、
- 歯がすり減る
- 歯周病が進行する
- 顎関節症が悪化する
といった変化が起こることもあります。
だからこそ、「まだ治療するかどうか決めていない」という段階でも、一度相談していただく価値はあると考えています。
治療を始めるタイミングは「年齢」ではなく「状態」で決まります
患者さんの中には、
「何歳なら手術できますか?」
と質問される方もいらっしゃいます。
私たちが診療で最も重視しているのは、年齢そのものではありません。
- 顎の成長は終了しているか
- 咬み合わせはどうなっているか
- 日常生活で困っていることはあるか
- 顎関節に問題はないか
- 患者さんご自身が治療を希望されているか
こうした点を総合的に判断し、一人ひとりに最も適した治療時期をご提案しています。
まとめ|気になった時が相談するタイミングです
顎変形症には、「○歳までに治療しなければならない」という年齢制限はありません。
一方で、年齢によって治療の目的や注意点は異なります。
- 成長期は、将来を見据えた診断と経過観察が重要
- 10代後半で身長の伸びが落ち着いていれば、治療開始の一つの目安になる
- 成人は、最も治療を進めやすい時期
- 40代以降でも、適切な検査を行えば治療は十分可能
「今の年齢で相談してもいいのかな」と迷われている方こそ、一度専門医に相談していただきたいと思います。
早く治療を始めることだけが大切なのではありません。
今の状態を正しく知ることが、最適な治療への第一歩になります。
ご相談をご希望の方へ
顎変形症は、一人ひとり症状や骨格が異なるため、治療を始める適切な時期も同じではありません。
「まだ治療するか決めていない」
「まずは話だけ聞いてみたい」
という方も、お気軽にご相談ください。
現在の顎の状態や咬み合わせを詳しく評価し、治療の必要性や開始時期について分かりやすくご説明いたします。
こんにちは。横浜歯科口腔外科クリニック院長の高原楠旻(たかはら なみあき)です。 ■略歴 ■所属学会記事監修 横浜歯科口腔外科クリニック 院長 高原 楠旻

私はこれまで20年以上にわたり顎変形症の診療に携わり、多くの患者さんの顎矯正手術を担当してきました。
このブログでは、顎変形症について専門医の立場から、できるだけ分かりやすくお伝えしています。