顎変形症を放置するとどうなる?治療しないリスクを専門医がわかりやすく解説
「今はそこまで困っていないから、このまま様子を見ても大丈夫かな。」
顎変形症と診断された方や、「もしかしたら顎変形症かもしれない」と思っている方から、このようなご相談を受けることがあります。
実際、顎変形症は命に関わる病気ではありません。そのため、「急いで治療しなくてもいいのでは?」と考える方も少なくありません。
結論からお伝えすると、顎変形症を放置したからといって、すべての方の症状が必ず悪化するわけではありません。
しかし一方で、咬み合わせや骨格のバランスが原因となり、年月とともに歯や顎関節に負担が蓄積し、症状が強くなる方もいらっしゃいます。
今回は、顎変形症を治療せずに過ごした場合に起こり得る変化について、専門医の立場から分かりやすくお話しします。
「放置=すぐ悪くなる」ではありません
まずお伝えしたいのは、顎変形症は虫歯や感染症のように、「放置すると急速に悪化する病気」ではないということです。
10代の頃から受け口や顔の左右差を自覚していても、大きな不自由なく生活されている方もいます。
その一方で、20代、30代、40代と年齢を重ねるにつれて、
「最近、食べにくくなってきた」
「顎が疲れやすい」
「歯が欠けるようになった」
など、新たな症状が出てくる方も少なくありません。
つまり、顎変形症は「今の症状」だけではなく、「将来どうなる可能性があるか」を考えることも大切な病気なのです。
咬み合わせの負担は少しずつ積み重なります
正常な咬み合わせでは、食事の際の力が歯全体にバランスよく分散されます。
しかし顎変形症では、一部の歯だけが強く当たったり、前歯で食べ物を噛み切れなかったりすることがあります。
その状態が何年、何十年と続くと、
- 歯がすり減る
- 詰め物や被せ物が外れやすくなる
- 歯にヒビが入る
- 一部の歯だけに過剰な負担がかかる
といった変化が起こることがあります。
患者さんの中には、
「歯が悪いと思っていたけれど、原因は咬み合わせだった」
という方も少なくありません。
歯周病の進行にも影響することがあります
歯周病は細菌による病気ですが、咬み合わせの負担も無関係ではありません。
強い咬合力が一部の歯に集中すると、歯を支える骨や歯ぐきに負担がかかり、歯周病の治療が難しくなる場合があります。
もちろん、顎変形症だから歯周病になるわけではありません。
しかし、歯周病がある方では、咬み合わせを含めて評価することが重要です。
顎関節への負担が大きくなることもあります
私が顎関節症の診療をしていて感じるのは、
顎変形症があるから必ず顎関節症になるわけではないということです。
一方で、咬み合わせや骨格の不調和によって顎関節に負担がかかりやすくなっている患者さんがいることも事実です。
例えば、
- 口を開けると痛い
- 顎がカクカク鳴る
- 口が開けにくい
といった症状がある場合には、顎関節の状態も詳しく調べる必要があります。
顎変形症と顎関節症は別の病気ですが、お互いに影響し合うことがあるため、両方の視点から診断することが大切です。
食べることや話すことへの影響
顎変形症では、
「前歯で麺類が噛み切れない」
「食べ物を細かく噛めない」
といった症状がみられることがあります。
また、開咬の方では空気が漏れやすくなり、発音しにくい音が出ることもあります。
毎日のことなので慣れてしまっている方も多いのですが、治療後に
「こんなに噛みやすかったんですね。」
と驚かれる患者さんは少なくありません。
いびきや睡眠への影響がみられる場合もあります
下顎が小さい方や後方に位置している方では、舌が喉の方へ下がりやすくなることがあります。
その結果、
- いびき
- 睡眠時無呼吸症候群
などに関係する場合があります。
もちろん、いびきの原因は一つではありません。
肥満や鼻の病気など、さまざまな要因が関係します。
しかし、骨格が原因となっているケースもあるため、症状が気になる方は一度相談されることをおすすめします。
見た目の悩みは「気にしすぎ」ではありません
「見た目を気にするなんて贅沢ではないか。」
そう考えてしまう患者さんもいらっしゃいます。
しかし、
- 人前で笑うことに抵抗がある
- 写真を撮られるのが苦手
- 横顔が気になってマスクを外せない
このような悩みは決して珍しいものではありません。
私たちは、見た目だけを理由に手術を勧めることはありません。
一方で、外見の悩みが生活の質(QOL)に大きく影響していることも事実です。
そのため、機能面だけでなく、患者さんご自身が何に困っているのかを大切にしながら治療方針を考えています。
「今困っていない」からこそ、一度相談してみてください
顎変形症は、ゆっくりと経過する病気です。
だからこそ、
「今は困っていないから。」
と考えて、そのまま何年も過ぎてしまう方も少なくありません。
しかし、実際には
- 歯への負担
- 顎関節への負担
- 咀嚼機能
- 発音
- 睡眠
- 見た目による心理的負担
など、さまざまな影響が少しずつ積み重なっていることがあります。
治療を受けるかどうかは、診断を受けてから考えても遅くありません。
まずは現在の状態を正しく知ることが、将来の選択肢を広げる第一歩になります。
まとめ|放置してもよいかどうかは「診断」が大切です
顎変形症を放置したからといって、必ず症状が悪化するわけではありません。
しかし、
- 咬み合わせによる歯への負担
- 顎関節への負担
- 食事や発音への影響
- いびきや睡眠への影響
- 見た目による心理的負担
など、年月とともに変化が現れることがあります。
「今は大丈夫だから」ではなく、
「今の状態は将来どうなる可能性があるのか」
を知ることが大切です。
ご相談をご希望の方へ
顎変形症は、一人ひとり骨格も症状も異なります。
そのため、「治療が必要かどうか」「今治療を始めるべきかどうか」も、それぞれ異なります。
「自分は様子を見ても大丈夫なのだろうか。」
「治療した方がよいのか、一度専門医の意見を聞いてみたい。」
そう思われた方は、お気軽にご相談ください。
現在の咬み合わせや顎の状態を詳しく評価し、将来を見据えた治療の選択肢について丁寧にご説明いたします。
こんにちは。横浜歯科口腔外科クリニック院長の高原楠旻(たかはら なみあき)です。 ■略歴 ■所属学会記事監修 横浜歯科口腔外科クリニック 院長 高原 楠旻

私はこれまで20年以上にわたり顎変形症の診療に携わり、多くの患者さんの顎矯正手術を担当してきました。
このブログでは、顎変形症について専門医の立場から、できるだけ分かりやすくお伝えしています。