顎矯正手術とは?手術は怖い?流れ・入院・痛みを専門医がわかりやすく解説
「顎の手術」と聞くと、不安に感じる方は少なくありません。
「どんな手術をするの?」
「痛みはどれくらいあるの?」
「顔は変わってしまうの?」
「仕事や学校はどのくらい休めばいいの?」
初診で来院される患者さんから、このような質問をいただくことはとても多くあります。
私が長年診療を続ける中で感じるのは、不安を抱えて来院された患者さんほど、手術後には「もっと早く相談すればよかった」と話されることが多いということです。
もちろん、不安がゼロになる手術ではありません。
しかし、手術の内容や術後の経過を正しく理解していただくことで、不安は大きく軽減できると考えています。
今回は、顎矯正手術とはどのような手術なのか、手術当日の流れや入院期間、術後の痛みについて、できるだけ分かりやすくお話しします。
顎矯正手術とは?
顎矯正手術とは、上下の顎の骨の位置を適切な位置へ移動させ、咬み合わせと顔全体のバランスを改善する手術です。
歯並びだけが原因であれば矯正治療だけで改善できますが、顎変形症では骨格そのものに問題があるため、矯正治療だけでは根本的な改善が難しい場合があります。
そのため、矯正歯科治療と顎矯正手術を組み合わせて治療を行います。
手術の目的は、見た目を変えることではありません。
「正しく咬めるようになること」
これが最も大切な目的です。
その結果として、横顔や口元、顔貌のバランスが自然に改善することがあります。
全身麻酔で行うため、手術中の痛みはありません
顎矯正手術は、全身麻酔で行います。
麻酔がかかると眠った状態になるため、手術中の痛みを感じることはありません。
手術時間は術式によって異なります。
下顎のみの手術、上下顎の手術、オトガイ形成術を追加する場合など、それぞれで手術時間は変わります。
詳しくは診察時にご説明していますが、いずれも安全を第一に考え、時間をかけて丁寧に手術を行っています。
顔に傷は残るの?
患者さんから非常によくいただく質問です。
顎矯正手術は、ほとんどの手術を口の中から行います。
そのため、通常は顔の皮膚に傷が残ることはありません。
術後しばらくは口の中に違和感がありますが、傷が治るにつれて徐々に気にならなくなります。
入院期間はどれくらい?
術式や全身状態によって異なりますが、多くの場合は4〜5日程度の入院になります。
当院では、手術後は隣接する病院へ移動していただき、医師・看護師が経過を確認しながら入院生活をサポートします。
入院中は、
- 痛みのコントロール
- 出血や腫れの確認
- 食事の開始
- 退院後の生活指導
などを行い、安全に退院できる状態になってからご自宅へ戻っていただきます。
手術後はどのくらい腫れる?
術後に最も気になるのが腫れです。
腫れには個人差がありますが、多くの場合、
術後2〜3日頃に最も腫れが強くなり、その後少しずつ落ち着いていきます。
大きな腫れは2〜3週間ほどで改善し、その後も数か月かけて自然な状態へ変化していきます。
当院では、腫れをできるだけ抑えるために、顔面の圧迫固定やドレーン(血液のたまりを防ぐ管)を使用し、術後管理を丁寧に行っています。
手術後の痛みは強い?
「骨を切る」と聞くと、とても痛い手術を想像される方が多いと思います。
しかし実際には、
「思っていたより痛くなかった。」
という感想をいただくことが少なくありません。
痛み止めの内服で十分コントロールできることがほとんどです。
もちろん痛みには個人差がありますが、術後は適切に鎮痛管理を行いながら経過をみていきます。
多くの患者さんは、
「痛み」よりも「腫れ」や「口が開けにくいこと」の方が気になると話されます。
食事はいつから食べられる?
手術翌日から水分を摂取し、2日目から食事を開始します。
その後は回復状況を確認しながら、少しずつ食事の内容を通常のものへ近づけていきます。
退院後しばらくは、
- おかゆ
- やわらかいうどん
- 豆腐
- ヨーグルト
など、やわらかい食事が中心になります。
多くの患者さんは約1か月でかなり通常の食事に近づきますが、骨が十分に安定するまでは無理をせず、少しずつ食べられるものを増やしていきます。
仕事や学校にはいつ復帰できる?
患者さんによって職業や生活環境が異なるため一概には言えませんが、
デスクワークであれば2〜3週間程度で復帰される方が多く、体力を使う仕事ではもう少し余裕をもって休まれることをおすすめしています。
学生の方では、春休みや夏休みなどの長期休暇を利用して治療を受けられる方も多くいらっしゃいます。
また、
- 進学
- 就職
- 結婚
- 出産
などのライフイベントに合わせて治療計画を立てることも可能です。
一番大切なのは「信頼できるチーム」で治療を受けることです
顎変形症の治療は、手術だけで完結するものではありません。
矯正歯科医、口腔外科医、麻酔科医、歯科衛生士、看護師など、多くの医療スタッフが連携して初めて安全な治療が実現します。
私は、顎矯正手術で最も大切なのは、手術の技術だけではないと考えています。
術前診断から術後のフォローまで、一貫して患者さんに寄り添い、不安や疑問に丁寧にお答えすることも、良い治療には欠かせません。
まとめ|「怖いからやめる」のではなく、「正しく知ってから考える」
顎矯正手術は、大きな手術であることは間違いありません。
だからこそ、不安を感じるのはごく自然なことです。
しかし、
- 全身麻酔で行うため手術中の痛みはありません
- 顔に傷が残ることはほとんどありません
- 入院期間は4〜5日程度です
- 術後の痛みは適切にコントロールできます
- 多くの患者さんが「もっと早く相談すればよかった」と話されています
こうしたことを知るだけでも、手術に対する印象は大きく変わるのではないでしょうか。
「手術を受けるかどうか」は、正しい情報を知ったうえで決めることが何より大切です。
ご相談をご希望の方へ
顎矯正手術は、すべての顎変形症の患者さんに必要なわけではありません。
まずは現在の咬み合わせや骨格を詳しく評価し、本当に手術が必要なのか、どのような治療方法が適しているのかをご説明いたします。
「手術について詳しく話を聞いてみたい。」
「自分は手術が必要なのだろうか。」
そのような疑問をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
患者さん一人ひとりのお話を伺い、不安や疑問を解消しながら、最適な治療方法を一緒に考えていきます。
こんにちは。横浜歯科口腔外科クリニック院長の高原楠旻(たかはら なみあき)です。 ■略歴 ■所属学会記事監修 横浜歯科口腔外科クリニック 院長 高原 楠旻

私はこれまで20年以上にわたり顎変形症の診療に携わり、多くの患者さんの顎矯正手術を担当してきました。
このブログでは、顎変形症について専門医の立場から、できるだけ分かりやすくお伝えしています。